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神戸地方裁判所 平成4年(行ウ)43号 判決

原告

横尾脩一

原告

久保福夫

右両名訴訟代理人弁護士

原田紀敏

被告

姫路郵便局長大江幸夫

右指定代理人

中牟田博章

(他九名)

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

一  被告が平成二年三月七日付でなした原告横尾脩一に対する姫路郵便局保険課主任から同局第三集配課主任への配置換処分を取り消す。

二  被告が平成二年三月七日付でなした原告久保福夫に対する姫路郵便局保険課主任から同局第二集配課主任への配置換処分を取り消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実

1  原告横尾脩一(以下「原告横尾」という。)は、昭和二一年生まれで、昭和四二年四月一四日、臨時雇として姫路郵便局(以下「姫路局」という。)に入局し、同年六月臨時補充員、昭和四三年一一月事務員、昭和四四年一〇月郵政事務官となり、入局以来約二三年間保険課外務員として勤務してきた。

2  原告久保福夫(以下「原告久保」という。)は、昭和二五年生まれで、昭和四四年七月五日、臨時補充員として姫路局に入局し、昭和四五年一一月事務員、同月郵政事務官となり、入局以来約二一年間保険課外務員として勤務してきた。

3  被告は、平成二年三月七日付をもって、原告横尾を姫路局保険課主任から同局第三集配課主任へ、原告久保を姫路局保険課主任から同局第二集配課主任へ、それぞれ配置換する処分(以下「本件各処分」という。)をした。

二  原告らの主張

本件各処分は、〈1〉原告らの希望ないし同意を欠き、〈2〉人事権を濫用し、〈3〉原告らに過大な経済的、身体的及び精神的不利益を強い、〈4〉不当労働行為に当たるものとして、違法なものである。

1  原告らの希望に基づかず、同意も得ていないことについて

郵政事業は公権力の行使とは直接関係のない経済活動を内容としているのであるから、郵政職員の勤務関係は私企業のそれと同質であり、したがって、公務員関係法規の及ぶ範囲においても、その解釈、運用に当たっては、この点を十分に考慮すべきであり、及ばない範囲においては、労働契約法理をもって規律されるべきである。

そして、郵政事業においては郵便事業、郵便貯金事業、簡易保険事業(以下「簡保事業」という。)という業務内容、仕事内容の全く異なる三事業が併存し、郵政職員は、入局時に右三事業のいずれかの内務職又は外務職に職種が限定されており、本人の希望又は同意がある場合でなければ職種が変わることはなく、それが労使慣行として確立しており、現に、原告らは、入局以来二〇年以上にわたって保険外務員として勤務してきたのである。

本件各処分は、右労使慣行を無視して、原告らの希望に基づかず、同意もなくしてなされたものであり、違法なものである。

2  人事権の濫用について

本件各処分は、業務上の必要性に基づかず、原告らの募集実績に藉口して、当局の施策に反対、抵抗する原告らを職場から排除し、「命令と服従」の強権的職場支配を確立するという目的でなされた恣意的な人事権の行使であり、人事権の濫用として無効である。

(一) 郵政事業については、昭和六二年に「郵政事業活性化計画」(以下、単に「活性化計画」という。)が発表されたが、この活性化計画がそれまでの合理化計画と異なる点は、赤字克服から一転して大幅な利潤獲得を図るため、郵政事業に民営的手法を導入し、郵政事業の本来の目的を逸脱して実質的民営化を図っている点にある。

そして、そのために採用された施策が、〈1〉経営基盤の強化、〈2〉需要の拡大、〈3〉マンパワーの高揚であるが、当局は、この「マンパワーの高揚」を合理化計画の根幹に位置づけ、「マンパワーの高揚」の名のもとに、従前の職場慣行を無視して、〈1〉職場規律の強化、〈2〉勤務時間管理の強化、〈3〉業務指導の強化という三本の柱で労働者支配の強化、再編を図ろうとしているのである。

(二) 国営事業としての簡保事業は、「国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする」ものであって、営利を目的とするものではないから、業務上の必要性を判断するに当たっても、右のような簡保事業の基本的使命から判断されるべきであり、保険の募集実績(以下「募集実績」という。)という数字的な成績のみで必要性の判断がなされてはならないのである。

このような見地からすると、募集実績の低さのみを理由とする本件各処分には業務上の必要性は認められず、かえって、本件各処分は、成績至上主義による競争の職場化を促し、簡保事業の基本的使命を置き去りにして自己の成績のみを追求する仕事の在り方を助長し、ひいては、小口保険の中途解約を勧めて大口契約に切り換えさせる等契約者に不利益を与える悪質募集に走らせる原因となる。

(三) 被告の主張する配置換対象者選定理由には、以下に述べるとおり、理由がない。

(1) 原告らは、国民にあまねく公平に保険を勧誘するという観点から誠実にその業務を遂行してきたものであり、成績不良者には該当しない。

(2) 被告は、本件各処分当時、月に一回、一時間程度の集団指導を募集実績の少ない職員に対して行っていたが、その指導の内容は、「取りやすい年金を取れ」といったもので、募集のための「話法」等技術的な指導を行うというよりも、見せしめ的に辱めを受けさせることによって思想の改造を図るという側面の強いものであった。

なお、原告らは、保険課の責任者である保険課長から個別的な指導や指示を受けたことはなかった。

(3) 保険課のミーティング等において、募集目標額の達成が繰り返し強調されてはいたが、簡保事業にとっての目標額の達成の必要性、そのためには個人目標として幾らの実績が必要とされるのかといった具体的な理由についての説明はなく、単に抽象的に目標額を達成せよとの命令がなされていたにとどまった。

(4) 被告が、原告らの業務向上意欲の欠如を示す事情として主張する四項目は、当時、原告らが所属していた全逓信労働組合(以下「全逓」という。)姫路支部が行っていた次の指導に従って、被告の施策に非協力で対応したものであるから、いずれも業務向上意欲の評価には全く結びつかない。

イ 利用者に関する訪問状況や集金日等は、職員が各自で記録するなどして把握している。「営業日誌」の提出は、外務労働に対する管理強化を目的とするものであるから、その提出強要には反対する。

ロ 「お知らせプレート」には、業務上の必要性はなく、着用を迫ることによって、企業意識を植えつけ、労働者意識の解体を迫るものであるから、基本的には着用を拒否する。

ハ 「氏名札」の着用は、管理強化及びプライバシーの侵害にもつながるので、基本的には不着用方針で対処する。

なお、保険課外務員は各自名刺を持って利用者宅を訪問しており、氏名札を着用する必要性は存在しない。

ニ 「ラジオ体操」については、これが労務政策として使われていることに反対し、基本的に不参加で対処する。

3  本件各処分の不利益性について

(一) 郵便外務職の主な業務は郵便の配達であるところ、郵便物の増大及び郵便物自体の大型化による重量の増大により、配達業務による身体的な負担も増大しており、集金と募集を主な業務とし、重い荷物を積んで自動二輪車に乗ったことのない原告らにとって、配達業務は身体的に非常に厳しい負担となり、そのため、原告らは、本件各処分後、体重の減少、目や歯の不調など様々な身体的不調をきたした。

また、原告らは、本件各処分による強制的な配置換により、多大な精神的苦痛を受け、保険課が現金を扱う職場であるが故に、「何か金銭的な問題を起こしたのではないかと思われはしないか。」とまで考え、苦しんだ。

(二) 原告らの時間外労働は、保険課では年間一〇時間程度であったが、集配課においては、年末年始の週休の廃休、非番日買い上げ等を含めると、年間一五〇時間を越える時間外労働を余儀なくされている。

(三) 本件各処分後の原告らの給与支給総額と処分前の給与支給総額とを比較すると、被告主張のとおり、本件各処分後の給与支給総額の方が多くなっているが、そのうちの大部分は本件各処分後の平成二年四月に実施された定期昇給及びベースアップ(以下、単に「昇給等」という。)によるものであり(毎月の給与及び夏期・年末手当、超過勤務手当に連動した昇給等による年間の給与の増加額は、原告横尾について二四万七六〇〇円、原告久保について二四万五九六〇円となる。)、右の昇給等による増額分と超過勤務手当、祝日給等を除外し、正規の勤務時間内の労働に対して支給される給与額のみについて、本件各処分前一年間(平成元年四月から平成二年三月まで)と本件各処分後一年間(平成二年四月から平成三年三月まで)との給与総額を対比すると、本件各処分後はいずれも大幅な減収(原告横尾について四二万四三六一円、原告久保について四三万八〇四四円)となっている。

4  不当労働行為性について

原告らは、前記2(三)(4)記載のとおり、所属する労働組合の指導に従い、また、自らの思想・信条にも基づいて、当局の強権的な労務政策に反対し、抵抗してきた。本件各処分は、原告らの正当な組合活動を嫌悪して、労働組合及び組合活動の弱体化を図ったものであり、かつ、原告らの職務に対する姿勢が当局の成績至上主義による職場支配にとって障害となるとの認識の基に、原告らを狙い撃ちし、恣意的、見せしめ的に強行された配置換であるから、労働組合法七条一、三号の不当労働行為に該当する。

三  被告の主張

1  原告らの同意の要否について

現業国家公務員の勤務関係は、基本的には、公法的規律に服する公法上の関係であるから、国と職員との間に契約ないし同意という観念を入れる余地はない。そして、職員の配置換についても、任命権者の裁量によって行われる行政処分であるから、個々の職員の同意を要するものではない。

なお、郵政省においては、毎年実施している「勤務についての希望、意見」等を通じ、又はその他の方法により、職員から具体的な配置換希望の申し出があった場合は、任命権者が所属課長等を通じ、必要に応じ、当該職員からその理由等を聴取しているが、これは人事管理を円滑に行うための措置であって、本人の同意を得るためのものではない。

2  本件各処分の必要性及び合理性について

(一) 郵政省においては、その事業を取り巻く内外の環境条件の変化に的確に対応しつつ、事業が真に競争力を強化し、社会的有用性を高め、国民世論の支持を得ながら更なる発展を遂げてゆくためには、事業経営を見直し、効率経営、積極経営を強力に推進してゆく必要があるとの認識をかねてから有しており、これを事業経営上の必要不可欠の課題としていた。このような基本認識に基づき、同省は、郵政事業を活性化し、真に競争力を強化してゆくための方策の一つとして、昭和六二年一一月、〈1〉効率化・合理化の推進による経営基盤の強化、〈2〉サービスの改善・新商品の開発による需要の拡大、〈3〉事業に直接係わる職員の意欲の高揚・効率の向上・創意性の発揮に焦点をあてたマンパワーの高揚の三つを柱とする活性化計画を策定し、各地方郵便局に対し、その具体的施策の推進を指導した。そこで、近畿郵政局においても、右指導に従って、普通郵便局長等に対し、職場の基盤整備や職員の意識変革に資する具体的施策を、昭和六三年度から三年間を目処に、実施するよう指導したが、近畿郵政局管内においては、他管内に比して、郵便、貯金及び保険の三事業とも業績が低迷し、業績不振の打開が急務になっていたため、人事交流を業績不振の打開のための有効な方策として管内を挙げて推進してきた。

被告は、近畿郵政局の右方針に従い、局全体の全体的な業績の向上と人事の刷新を図り、署員の勤労意欲を高揚させるために、以前から外務職を中心に局内の人事交流を行ってきていたのであり、本件各処分は、以上のような人事交流の一環として行われたものである。

(二) 原告らが本件各処分の対象者とされた理由は、以下のとおりであり、本件各処分には十分な合理性がある。

(1) 姫路局においては、従来から、各月の募集実績が低い者に対し、翌月初めに募集技術や募集話法等の指導のための研修を行い、また、募集指導官との共同募集を行って、セールステクニックを直接指導したり、業務研究会を開催して新商品や話法についての指導を行ってきたが、原告らは、低実績者として、これらの研修、指導等を幾度となく受けながら、募集実績の向上が認められず、平成一営業年度(昭和六三年九月一日から平成元年八月三一日)における原告らの募集実績は、課長代理等の役職者、保険外務員経験が短い者を除けば、最下位グループに属し、平成二営業年度の平成二年一月三一日までの募集実績は、文字どおり最下位の成績であり、同局の平均にもはるかに及ばない実績であった。

以上のような原告らの過去の募集実績に加え、原告らは四〇歳代前半の働き盛りであって、保険外務経験が二〇年以上にも及び、かつ、長期にわたって指導を受けながら募集実績の向上が見られないことから、原告らには保険外務員としての適性がないと判断されたものである。

(2) 原告らは、保険課長等から、PR用の「お知らせプレート」の着用、勤務時間中における氏名札の着用、ラジオ体操への参加を再三にわたり指示されていたにもかかわらず、これに従わなかった。のみならず、原告らは、保険課長が外務職員の営業活動を把握し、指導を行う必要上提出が義務づけられている営業日誌の提出さえしておらず、これらの点から見ても、原告らには募集実績向上の意欲が著しく欠如していたといわざるを得ない。

(3) 原告らは、内務職への任用資格がないので、配置換先は外務職に限定されるところ、保険外務以外の外務職である郵便貯金外務は、その職務内容が保険外務と類似しているので、同外務への配置換は、原告らの能力ないし適性上問題があること、原告らの年齢及び健康状態からすれば、郵便外務にも十分対応できることなどから、原告らを郵便外務へ配置換することとしたものである。

3  本件各処分の不利益性について

本件各処分は、以下に述べるとおり、いずれも不利益処分に当たらないものである。

(一) 配置換とは、「分類官職に任用されている職員をその官職と同一の職級に属する他の分類官職で任命権者を同じくするものに任命すること、又は、非分類官職に任用されている職員を任命権者を同じくする他の非分類官職に昇任若しくは降任以外の方法により任命すること。」をいうところ(人事院規則八―一二 五条四号)、本件各処分は、職務分類規定に定められた「外務職」から「外務職」への異動であり、昇任若しくは降任を伴うのではなく、役職の点でも「主任」から「主任」へ異動させるものである。

したがって、本件各処分は、原告らの法的地位に何ら変動をもたらすものではなく、そもそも不利益処分には当たらない。

(二) 原告らの本件各処分の直近の定期健康診断の結果(平成元年四月実施)によれば、原告らは、いずれも指導区分が「健D」で、「要観察2」である。そして、郵政省健康管理規程によれば、右指導区分は、生活規正区分では「健康者」、医療区分では「要観察」に該当するので、勤務を休んだり、勤務に制限を加える必要のない通常の生活をしてもよく、また、医療についても、定期的な医師の観察指導又は専門医の受診が必要であるが、医師の直接の医療行為をうける必要はなく、所属長において、経過観察をするための受診指導及び再発防止のための指導を行う必要があるだけであり、このことは、原告らの健康状態が、同一局所の同一職種への配置換に際しても、特別な配慮をしなければならないほどのものではないことを示している。

また、原告らは、平成二年二月上旬に提出した「職務に対する希望、意見(B)」の健康状態の欄に、健康である旨の記載をしていたので、被告は、原告らについては、年齢的にも健康上からも問題がないものと認識して、本件各処分を行ったものである。

(三) 本件各処分後における原告らの時間外労働の過半は、年末年始の業務繁忙期におけるものであって、平常期における時間外労働は、一週間当たり一ないし二時間程度にすぎず、この程度の時間外労働は通常受忍すべき範囲内のものというべきであるから、これをもって過酷な労働強化とはいえない。

(四) 郵便局に勤務する職員は、「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法」の適用を受け、この法律に基づく郵政事業職員に対する給与制度によって俸給等が支給されているところ、配置換により従事する職務に変更が生ずると、給与の支給額にも変動が生ずることになるが、これは郵政事業職員の給与制度上の当然の仕組みであり、やむを得ないものである。

原告らは、本件各処分により、貯蓄奨励手当の支給を受けられなくなったが、郵便外務職員俸給調整額、郵便販売促進手当、重労務手当等が新たに支給される上に、超過勤務手当、夏期手当、年末手当等の支給額も増加するので、これらを総合考慮すれば、原告らの本件各処分後の年間給与総受給額は増加こそすれ、決して減少してはいない。

4  不当労働行為性の有無について

本件各処分は、前記のとおり、業務上の必要性に基づいてなされたものであり、原告らの組合活動を嫌悪し、労働組合の弱体化を狙ったものではない。

なお、原告らの所属していた全逓は、昭和五八年に運動方針を大きく転換して、労使関係の近代化、業務の効率化・合理化に柔軟に対応してゆくこととしていたのであり、原告らの行動は必ずしも全逓の方針に従ったものではなかった。

四  主たる争点

1  本件各処分を行うにつき、原告らの同意を必要とするか。

2  本件各処分は、業務上の必要性に基づかず、不当な動機・目的をもって行われたものであるか。

3  本件各処分は、原告らに対し、通常甘受すべき程度を越える経済的、精神的及び身体的不利益を負わせるものであるか。

4  本件各処分は不当労働行為に当たるか。

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  被告は、本件各処分当時、姫路局保険課主任であった原告らの任命権者であり(郵政省設置法六条一項、郵政省職務規定七条二号別表第一)、本件各処分は、昇任又は降任を伴わない外務職から外務職への異動であるから、その性質は人事院規則八―一二 五条四号にいう配置換に該当し、行政処分に当たる。

ところで、任命権者は、採用、昇任、転任、配置換又は降任のいずれか一の方法により職員を任命することができ(国家公務員法三五条、人事院規則八―一二 六条一項)、郵政省就業規則においても、「職員は、業務上の都合により転任、配置換又は併任を命ぜられることがあるものとする。」旨規定されているが(同規則一一一条の三)、配置換の要件については、これら関係法令上特段の定めはない。

したがって、任命権者は、その裁量によって、職員の配置換をすることができ、右裁量には一定の合理的な限界があるにしても、配置換を行うに当たり、当該公務員の同意を要するとする法令上の根拠はないというべきである。

2  また、原告らは、郵政省においては、配置換は本人の希望又は同意に基づいて行うという労使慣行が確立していたにもかかわらず、本件各処分は、原告らの同意なくしてなされたものであるから、違法である旨主張する。

確かに、前記争いのない原告らの保険課在職間に照らしても、郵便、郵便貯金、簡易保険の各事業間の外務職員の人事異動は少なく、したがって、その意に反して他事業に配置換をされた外務員も少なかったものと推認されるが、本人の希望又は同意に基づかない他事業への配置換を違法としなければならないほど、配置換は本人の希望又は同意に基づいてのみ行うという労使慣行が確立していたと認めるに足りる証拠はない(〈人証略〉の証言及び原告らの各本人尋問の結果によっても、これを認めるに足りない。)。

なお、郵政省においては、定期的に職員から書面で勤務についての希望、意見等を聴取し、その結果を人事異動計画案の作成に当たって斟酌していることが認められるが(〈証拠略〉)、これは他省庁や民間会社でも広く行われている人事に関しての意向調査と同様の人事異動を円滑に行うための措置であると解されるから、聴取された本人の希望や同意は人事異動を行う際に総合考慮される一つの要素にすぎず、(〈証拠略〉)、本人の希望ないし同意を配置換を行う要件としたものとはいえない。

そうすると、この点についての原告らの主張も理由がない。

二  本件各処分に至る経緯等について

前記争いのない事実及び証拠(〈証拠・人証略〉)並びに弁論の全趣旨によれば、本件各処分に至る経緯として、以下の事実が認められる。

1  郵政省においては、従前から職場の活性化を図るため、職員の能力、適性、経験、勤務成績等を総合的に勘案して、人事交流を積極的に行う方針を採っていたが、昭和六二年一一月に至り、前記被告の主張2(一)記載のとおり、事業経営を見直し、効率経営、積極経営を強力に推進してゆくことが必要不可欠な課題となっているとの認識に基づき、同記載の三点を柱とする活性化計画を策定し、各地方郵政局に対し、その具体的施策の推進を指導した。そして、右施策の一つであるマンパワーの高揚の具体的施策として、人事交流の積極的推進、能力開発によるレベルアップ等による人材の弾力的活用、自己申告制度の充実、役職者の能力主義任用等による公正な人事の推進、能力、実績主義による処遇等が掲げられていた。

2  近畿郵政局においても、右指導に従って、普通郵便局長等に対し、職場の基盤整備や職員の意識変革に資する具体的施策を昭和六三年度から三年間を目処に実施するよう指導したが、右指導中においては、郵便局が取り組むべき活性化施策項目の例として、一般職員の積極的、計画的な局内異動の推進、事故等に対する早期の注意・指導、セールス活動記録(営業日誌)の充実等が掲げられており、また、平成二営業年度の簡易保険及び郵便年金事業の営業方針としては、個人目標額の設定、セールス活動記録簿の活用、人事交流の推進等による営業推進体制の確立、低実績者への指導強化、各種訓練、研修の充実等による営業能力の向上、防犯意識の高揚、正規取扱の励行、検査・監査の励行による事故犯罪の防止等が掲げられていた。

3  被告も、近畿郵政局の右指導に従って、姫路局の全体的な業績の向上と人事の刷新を図り、職員の勤労意欲を高揚させるため、職員の年齢、経験年数、適性等を総合的に勘案して、局内の人事交流を従前から行ってきたが、平成二年度においても、上記方針の下に、外務職を中心に局内の人事交流を行うこととし、平成元年一二月上旬の局議において、各課長に対し、年明けに局内の人事交流を行うこと、平成元年度は内務職を中心に配置換を行ったので、平成二年度は外務職を中心に配置換を行うとともに、郵便課職員の担務変更も行うこと、各課長は右方針の下に配置換等の候補者を選定し、平成二年一月末までにそのリストを副局長宛に提出することを指示した。

4  保険課長は、右指示に従って、募集実績、郵政省の各種施策への参画状況等を総合的に勘案して、原告らを含む六、七名を配置換候補者として選定し、平成二年二月上旬に、その名簿を副局長に提出し、このようにして各課長から提出された配置換候補者名簿を基に、副局長において、職員の年齢、経験年数、適性、健康状態、希望等を総合的に勘案して異動案を策定し、これを被告において決裁した。

そして、被告は、同年三月二日、原告らを含む配置換予定者八名に対し、所属課長等を通じて内命を行い、次いで、同月七日、人事異動通知書を交付して本件各処分を行った。

5  なお、郵政省においては、毎年職員に所定の書面に勤務についての希望や意見を記入して提出させ、人事管理の資料としていたが、原告らは、平成二年二月提出の右書面の職務についての希望の欄の「現職務を引続きやりたい」の箇所、勤務地についての希望欄の「現勤務地のままでよい」の箇所、健康状態の欄の「健康」欄にそれぞれチェックをして、提出していた。

6  原告らは、姫路局入局後、全逓に加入し、それぞれ姫路支部の執行委員等の役職に就任するなどし、積極的に全逓の組合活動に従事したこともあったが、本件各処分について、本人の同意を得ない強制配転であるとして、当局に抗議するよう全逓に申し入れをしたにもかかわらず、全逓が本件各処分に反対しないとの態度を採ったので、全逓を脱退し、平成二年五月二九日に、組合員数一〇数名で新たに兵庫郵政連帯という労働組合を結成した。

三  争点2について

1  原告らの募集実績について

証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 原告らの募集実績は、平成一営業年度(昭和六三年九月一日から平成元年八月三一日まで)においては、課長代理等の役職者及び保険外務員経験の短いものを除けば、最下位グループに属し(三八名中原告横尾は三五位、原告久保は二九位)、本件各処分直前の平成二営業年度(但し、平成二年一月三一日までの五か月間のもの)は、最下位の成績(三七名中原告横尾は三六位、原告久保は三七位)であった。

また、姫路局における一人当たりの募集実績を見ても、平成一営業年度の同局の平均が二七六万一三四四円であるのに対し、原告横尾は九三万九八九〇円(平均の三四パーセント)、原告久保は一三九万一七九六円(平均の五〇・四パーセント)、平成二営業年度の一月末現在の同局の平均が一一五万七八五七円であるのに対し、原告横尾は三八万九〇七〇円(平均の三三・六パーセント)、原告久保は三七万七六一〇円(平均の三二・六パーセント)であり、いずれも同局の平均を大幅に下回っていた。

なお、保険課外務員の担当地域は定期的に変更されていたので、担当地域の地域性によって常に募集実績が下位にならざるを得ないというようなことはなかった。

(二) 姫路局においては、各保険外務員に、個人目標を設定させるほか、募集実績を各人別に当月実績額、累計募集実績額、累計募集実績順位を示す「個人別保険募集日計表」を毎月作成して職員に回覧していたので、原告らにおいて、自己の実績の位置づけを知る機会は十分にあり、さらに、姫路局においては、一か月の募集実績が一定額以下の低実績者について、翌月初めに役職者による一時間程度の特別研修を実施して、募集技術や募集話法等を指導する集団指導を行っていたが、原告らは、低実績者に該当し、多数回この特別研修を受けたが、募集実績の向上は見られなかった。

右事実に前記争いのない原告らの保険外務経験を考慮すると、原告らの募集実績は、一時的ないし特殊の事情によって低位にあったというようなものではなく、原告らの保険外務職に対する適性を疑わしめるに足りるものということができる。

そして、郵政三事業が独立採算制を採っていること、社会情勢の変化等に伴い、郵政事業においても、事業の効率的な運営が重視されるようになってきていることを踏まえると、募集実績を保険外務職員の業務についての適性の判断資料とし、配置換等の人事異動を行う際にこれを考慮するは止むを得ないというべきである。

なお、原告らは、活性化計画は、マンパワーの高揚の名の下に、労働者支配の強化・再編を図ろうとするものであると主張するが、前記のとおり、郵政事業の効率的な運営の一般的な必要性はこれを肯定することができるし、業績打開のための方策として人事交流を積極的に推進するという施策についても一般的な合理性を肯定することができる。

また、原告らは、郵政事業は営利を目的とする事業ではないにもかかわらず、郵政当局の過度の成績主義の強調により、不当な方法によって募集実績を上げる風潮が見られるようになったと主張し、自分らは成績主義に走らず、郵政事業の公共性や良質募集を第一に心がけていたので、募集実績が上がらなかった旨供述する。

しかし、近畿郵政局は、平成二営業年度の営業方針の一つとして、事故犯罪の防止を掲げ、正規取扱の励行を指導しており(〈証拠略〉)、郵政省ないし郵政局においても、効率経営とともに事業の適正な運営に意を用いていたことが窺われるし、活性化計画の実施後、募集実績を上げるため不当な方法による募集が多発したことを認めるに足りる的確な証拠はない。

2  姫路局等の施策に対する原告らの態度について

証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 姫路局においては、その施策として、保険外務員の営業活動を把握するため、保険外務員に対し、「今日のお客様」という名称の営業日誌にセールス活動の内容を記入して保険課長に提出することを求めていたが、原告らは、全逓姫路支部の方針であるとして、保険課長らの指導にもかかわらず、右営業日誌の不提出を続けていた。

(二) 姫路局では、その施策として、営業年度の初めに、簡易保険・年金等の商品を顧客に宣伝するとともに、営業期の立ち上がりに際し、局としても頑張っていこうという姿勢を示す趣旨で、近畿郵政局が調製した「お知らせプレート」を着用することや、顧客の信頼向上等を目的として勤務時間中に氏名札を着用することを指導しており、局の大多数の職員はこの指導に従っていたが、原告らは前同様の理由で右プレート及び氏名札の不着用を続けていた。

(三) 姫路局保険課では、課の施策として、職員の健康増進のために、勤務時間中にラジオ体操を実施していたが、原告らは、前同様の理由で、ラジオ体操への不参加を続けていた。

右認定の各事実、ことに保険外務の業務遂行上その必要性が高いと考えられる営業日誌の提出についてまで、非協力の態度で臨んでいたことに、前記のような原告らの募集実績を併せ考慮すれば、原告らは募集実績向上の意欲に欠けていたと評価されても止むを得ないものというべきである。

なお、原告らは、右四施策については、いずれも業務上の必要性は認められず、職員に対する管理・支配の強化を狙ったものであるから、原告らの非協力的な態度は業績向上意欲の評価とは全く結びつかない旨主張するが、これらの施策中には、ラジオ体操のように保険外務業務の遂行と直接の関連があるといえないものもないではないが、いずれも業務の遂行に直接又は間接に有用なものとして、一応の合理性が認めれられるから、これらの施策が職員に対する管理・支配の強化を目的としたものとは認め難い。

3  配置換先の選択について

以上の認定事実及び前記争いのない事実に証拠(〈証拠略〉)及び弁論の全趣旨を併せ考慮すれば、被告は、原告らが外務職として採用されていること、職務内容が保険外務と類似している郵便貯金外務への配置換は、原告らの前認定のような適性及び職務に対する意欲から見て、適当でないと判断して、原告らを郵便外務へ配置換することとしたことが認められる。

4  以上1ないし3で検討した諸事情に照らせば、原告らを保険課外務員から集配課外務員に配置換した本件各処分が、業務上の必要性を欠く、不合理な処分であると認めることはできない。

四  争点3について

1  本件各処分前後における原告らの地位の変化について

前記争いのない事実によれば、本件各処分は、同一郵便局内での外務職から外務職への異動にすぎず、役職の点でも主任から主任への異動であって、配置換前後において、その法的地位にも、勤務地にも変化はないことが認められる。

2  そこで、本件各処分による職務の変動により、原告らに不利益が生じているかどうかについて検討するに、証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件各処分当時の保険課及び集配課の勤務形態は、保険課においては日勤(午前八時三〇分から午後五時一五分まで)のみであったが、集配課においては、通常郵便の配達のみを行う日勤(午前八時から午後四時四五分まで)の他に、通常郵便の配達及び速達等の配達を行う中勤(午前一〇時から午後六時四五分まで)と夜勤(午前一一時一五分から午後八時まで)とがあり、一〇日に一度程度の割合で中勤又は夜勤による勤務に就く必要があった。ただし、保険課においても、本件各処分直後の平成二年四月から中勤が導入された。

(二) 保険課における外務員の主たる業務は、簡易保険及び郵便年金の募集及び集金であり、日勤のみの当時の通常の勤務は、午前八時三〇分に出勤して、当日の外回りの準備をした後、午前九時ころからミーティングに参加し、九時三〇分過ぎから募集及び集金のため外回りに出て、一二時ころ一旦帰局して昼食をとり、午後一時ころから再度外回りに出て午後四時ころに帰局し、午後五時一五分まで当日の外回りの整理等を行うというものというものであった。

なお、保険課においては、外回りは五〇c.c.の原動機付自転車を利用して行っていた。

(三) 集配課における外務員の主たる業務は、郵便物の集配であり、前記のとおり、日勤、中勤又は夜勤によって勤務時間は異なるが、日勤の場合は午前八時に出勤して、当日配達分の郵便を集め、道順の組み立てをした後、午前一〇時ころから配達に出て、一二時ころ帰局して昼食をとり、午後一時から再度道順組み立てをした後配達に出て、午後四時過ぎに帰局し、午後四時四五分に勤務が終了するというものであった。

なお、集配課においては、配達する郵便物が多く、その重量も重いので、九〇c.c.の自動二輪車を利用して集配を行っていた。

(四) 原告らは、本件各処分に伴い、小型自動二輪免許を取得する必要が生じ、また、集配課においては、保険課在籍時と比較すると一日に回る戸数が増加したので、バイクの走行距離及び乗降回数が増加した。

さらに、原告らの超過勤務は、保険課在任中においては、年間一〇時間程度であったが、集配課においては、年末年始に繁忙期があるため、年間一五〇時間程度になった。

右認定の各事実によれば、本件各処分の前後において、原告らの勤務形態、外回りに利用する車両及び超過勤務時間に差異が生じ、右差異に伴って勤務による疲労度も増加したものと推認されるが、いずれも職務内容の変化に必然的に伴うものであり、これらの差異のうち、超過勤務の増加については、後記認定のとおり時間外手当等が支給されており、外回り用の車両の変更については、機動車運転手当の増額による補償措置がとられている(〈証拠略〉)ことをも考慮すると、特段の事情のない限り、郵政職員として受忍すべき範囲内のものであるというべきである。

なお、原告らは、本件各処分による強制的な配置換により、多大な精神的苦痛を被り、また、職務の変更による身体的負担の増加により、体重の減少、目や歯の不調などの身体的不調をきたし、さらに、原告久保においては、出勤時間が三〇分早まり、残業時間が増加したことにより、子供の保育園への送迎に支障をきたした旨主張し、その旨供述するが、本件各処分後、原告らが新しい職務に慣れるまでは、緊張が続き、疲労の程度も大きかったであろうと推認されるが、本件各処分時の原告らの年齢(原告横尾四三歳、原告久保四〇歳)及び前記二5で認定したとおり、原告らが本件各処分の直前に被告に対して健康である旨の申告をしていることに照らせば、本件各処分による配置換が原告らに受忍限度を越えた著しい精神的又は身体的苦痛を与えるものであったとは認め難く、前記特段の事情があるということもできない。

3  次に、本件各処分に伴う給与額の変動について検討するに、証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 郵便局に勤務する職員は「国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法」の適用を受け、この法律に基づく郵政事業職員給与制度によって俸給等が支給されているところ、本件各処分後も、原告らの基本給である俸給月額と昇給調整額(二級相当職)、役職調整額(主任)、扶養手当、通勤手当及び住居手当については変動はないが、貯蓄奨励手当の支給はなくなった。他方、本件各処分後は、郵便外務職員俸給調整額、郵便販売促進手当及び重労務手当(ただし、原告横尾が配属となった第三集配課については重労務手当の支給はない。)が、新たに支給されることとなり、調整手当、機動車運転手当、超過勤務手当、祝日給、夏期手当、年末手当、業績賞与及び年末年始特別繁忙手当は、本件各処分後、増加している。

(二) 右手当等の変動による支給金額の具体的な増減額としては、原告らが本件各処分前一年間に支給を受けた貯蓄奨励手当は、原告横尾が八四万五〇二二円、原告久保が九五万七五八二円であったから、右額が減少したことになるが、他方、本件各処分後一年間の時間外労働に対して支給された超過勤務手当、祝日給及び年末年始特別繁忙手当の合計額は、原告横尾について二万七一八七円から五一万二八一六円(増加分四八万五六二九円)に、原告久保について一万五七三三円から五四万二二八三円(増加分五二万六五五〇円)に増加しており、貯蓄奨励手当の支給停止による減収の大半は右超過勤務手当等の増加により補われている。

(三) なお、平成二年四月に昇給等が行われ、これにより毎月の給与と夏期・年末手当、業績賞与及び超過勤務手当等が増加し、原告横尾について二四万七六〇〇円、原告久保について二四万五九六〇円の増収となった。この結果、原告らの本件各処分後の年間の給与支給額の総額は、原告横尾について五五五万三七二〇円から五八一万二五八八円に、原告久保について五二一万七二四二円から五五五万一七〇八円に増加した。

右認定事実によれば、本件各処分による配置換により、原告らの給与の内訳が変化し、昇給等を除外すると年間の給与支給総額も若干減少したことが認められるが、その原因は本件各処分による配置換により貯蓄奨励手当が支給されなくなったことによるものであるところ、右手当は保険募集業務に従事する者に対し、その募集出来高に応じて支給されるものであるから(弁論の全趣旨)、配置換により保険募集業務に従事しなくなれば、右手当の支給がなくなるのは当然のことである上に、前認定のとおり、配置換により新たに手当が支給されるようになったり、引き続き支給される手当の増額や超過勤務手当等の増加によって、貯蓄奨励手当の不支給による減収の大半はカバーされ、かつ、本件各処分の直後に行われた昇給等により、処分直後の年間給与支給総額は処分前のそれよりも増加しており、これらの点を考慮すると、本件各処分により原告らが著しい経済的不利益を受けたということはできない。

なお、原告らは、経済的不利益の有無は正規の勤務時間に対する給与の支給額の対比によって判断すべきである旨主張するが、経済的不利益の有無は給与支給総額の比較によって判断し、時間外労働の増加については、身体的な負担の増大として判断するのが相当であるところ、前記のとおり、時間外労働の増加は原告らにおいて受忍すべき範囲内のものであるといえるから、原告らの右主張も採用することはできない。

五  争点4について

証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、原告らの所属していた全逓中央本部は、前記三2記載の各施策について必ずしも反対の方針をとっていた訳ではなく、全逓に所属する姫路局の職員の中にも同施策に協力していた者も少なくなかったことが認められるから、同施策に協力しなかった原告らを配置換の対象としたことが組合を嫌悪し、その弱体化を狙ったものであるとはいえない。また、前記のとおり、本件各処分が業務上の必要性を欠く、不合理な処分であるともいえないから、仮に、原告らが活発に組合活動をしていたとしても、直ちに右組合活動の故に本件各処分がなされたと推認することはできず、右事実を認めるに足りる証拠もない。

したがって、本件各処分が不当労働行為に当たるとの主張も採用できない。

六  結論

以上の次第で、本件各処分が違法であるとする原告らの主張にはいずれも理由がなく、本件各処分は適法になされたものというべきであるから、原告らの請求はいずれも棄却すべきである。

(裁判長裁判官 笠井昇 裁判官 太田晃詳 裁判官 藤井聖悟)

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